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おじさんはいい。なぜだかおじさんを見るとイラストにしたくなる。
夜も働く交通整理のおじさん、ランニングとももひきででうろうろするおじさん、若い子にまじってソフトクリームを食べている仕事帰りのおじさん、へべれけに酔っぱらっちゃってるどうしようもないおじさん、いやー巨人だめだね、とおしぼりで汗を拭くおじさん。

おじさんは何をしても絵になる。いろんなものがにじみ出ている。
そんな魅力的なおじさん達をいつもはちらっと見てるだけだったけれど、じーーーっと見たらまた何かおもしろい魅力がでてくるかもしれない、そんなわけで気になったおじさんについていってみることにした。
知られざるふつうのおじさんの世界!
わかりやすそうで、わかりにくいおじさんー後編
●何かを始めたいおじさん
ここらへんで、何か始めようとしているおじさん像がうかびあがってくる。「原稿たて」なるものを買っていたのでもの書きかなともちょっと思ったがあまりしっくりこない。
おじさんはひまわり館を出ると、さらに神保町のほうへ進む。そしてすぐ立ち止まる。「ありすぎだよ〜」とつっこみたくなったが、このあたりは道にも旅行パンフレットのようにカルチャーセンターのチラシがでていた。味のある通りだとばかり思っていたのでお金の匂いがしてちょっと裏切られた気分。まぁそんなものか。
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おじさん、今度は書道教室のチラシを手にとり、オフィス・デポのビニル袋に入れた。とくにやりたいものは決まってないようだ。

ところでこの道の味わいの種となっているだろう古本屋に、意外なほどおじさんは興味を示さない。店に入るどころかちらりと横目で見ることもない。わたしが古本屋好きだから気になるだけなのかもしれないが、少し不思議に思う。

そんな道も終わってしまい、白山通りという大通りにでる。交通量も多く、尾行がばれにくくはなったが見逃さないか注意も大変。わたしは調子に乗っておじさんのすぐうしろにくっつく。ビニル袋の中をちゃんと見せてもらおうと思ったのだ。その距離1メートル。どれどれと思った途端おじさんがくるっとこっちを向いた。またまたエレガントに。
えっばれた!?と一瞬パニック!どうしようどうしようと思ったら、おじさんはわたしを見る様子はなくそのままUターン。スタスタとわたしのわきを抜けて今来た道を戻る。そして道沿いのドトールコーヒーへ入ってしまった。そういえばドト−ルの前を通る時ほんのちょっとだけ入ろうかと迷っている様子だったことを思い出す。途中で「やっぱりお茶してこ」ということになったのだろう。

ドトールではおそらくブレンドのSサイズを頼み、壁にむかって座るスタイルの1人用席に座る。さっきもらったチラシをごそごそとビニル袋からだし、何か書き始めた。遠くて何を書いているのかわかったのだけど、もらってきたチラシに記入しているように見えた。豆乳ラテをすすりながらおじさんを見ていて、座る姿勢も書く姿勢もきっちりしているなと思う。何枚も書いたのか10分くらい熱心に書いていたが終わるとガザガサとしまって慌ただしく出ていってしまった。急いで追い掛ける。

●398円のサンダルを買う
白山通りを東京ドームのほうへ戻っていく。途中薬局があり、おじさん立ち止まる。店頭の段ボールに山盛りに入れられた安売りのサンダルを見ている。398円。始終上品さをかもし出していて、「安売りのサンダル」とは無縁な感じだったので、冷やかしているだけかと思ったら黒っぽいものを手に取り迷わず購入。いさぎよい買い物っぷり。ちょっと意外に思ったが庶民的なところが垣間見え、リアルなおじさんを感じた。
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また白山通りを行く。気付くと東京ドームに戻ってきた。わりと歩いたような気がしたがそうでもなかったようだ。階段を登って東京ドームシティへ。今度は2Fにあるエディー・バウアー(アメリカンカジュアルな服屋。ほどよく品がよいと思う。)に入る。ダウンやコートなどの冬物を見ている。ちょうど寒くなってきたのでそんな時期だなと思う。手にとって見ていたが試着するような様子はなく、ちょっと見てでてきてしまった。

そしてそのまま、エレガントな足取りのまま、地下鉄の後楽園駅に入っていった。

結局このおじさんがもの書きかどうか分からなかった。もの書きにしてはあくがない気がするし、もの書きってあくがあるのかどうかも本当はわからない。隠居生活を満喫しようとしている風にも見えたけど、それだけではないような気もした。くたっとした生活臭は決して漂っていなかったが、独身には見えなかったので、結婚はしていると思った。奥さんがいて、立派な30歳くらいの息子がいそうな気配もする。その息子にはわりと尊敬されてる気配もした。わかりやすそうで、わかりにくいおじさんでありました。完
by webmag-e | 2008-12-19 16:35 | 第5回 水道橋ー後編