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おじさんはいい。なぜだかおじさんを見るとイラストにしたくなる。
夜も働く交通整理のおじさん、ランニングとももひきででうろうろするおじさん、若い子にまじってソフトクリームを食べている仕事帰りのおじさん、へべれけに酔っぱらっちゃってるどうしようもないおじさん、いやー巨人だめだね、とおしぼりで汗を拭くおじさん。

おじさんは何をしても絵になる。いろんなものがにじみ出ている。
そんな魅力的なおじさん達をいつもはちらっと見てるだけだったけれど、じーーーっと見たらまた何かおもしろい魅力がでてくるかもしれない、そんなわけで気になったおじさんについていってみることにした。
知られざるふつうのおじさんの世界!
わかりやすそうで、わかりにくいおじさんー前編
●おじさん尾行にも慣れてきた
おじさん尾行5回目。さすがに5回目ともなると慣れがでてきた。自分の「おじさん尾行スタイル」ができつつあることに気付く。地味目の服装(黒、グレー、茶色が基本)、歩きやすい靴(おじさんは意外と歩くのが早いので小走りになる時もしばしば)、ショルダーバック(道具をすぐにとりだせ、なおかつ両手があく)。そしてバックの中身はメモ帳、ペン、デジカメ(Nicon COOLPIX。世界最速の高速起動でおじさんの変化を見逃さない)。それから途中で行けないのでトイレに行っておくことも重要。

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今回は最近知人に教えてもらってから最も気に入っている、「ウインズ後楽園」へ行く。ここは場外競馬場と言うのだろうか。競馬に関する知識がないのでわからないが、本物の馬がいないこと以外は競馬場と同じだと思う。馬券を買ってテレビでレースを見て、払い戻しもここでやってもらえるそうだ。8階まであるビルはすべてがそれなのですごい。みっちりおじさんである。しかもわたしが描きたくなるタイプの味のあるおじさんばかりなので大興奮。色も匂いも音もすべてが灰色なあの空間は「THE日本」という感じで本当にいい。そんなわけで最近はそこへ行って写真をとりためているので、おじさん尾行もぜひここでやりたいと思ったけれど、なにしろここのおじさん達は動かない。じっとしている。テレビと競馬新聞を熱心に見ることしかしていない。そこがよさなのは気付いてないわけではなかったが、尾行にはむかないことを再確認して残念な気持ちになる。そしてこのよさはやはりイラストにするのが一番だと思う。

後ろ髪をひかれつつウインズ後楽園を後にし、奥の階段を登ると東京ドームがある。一転してさわやかな空間がひろがる。よさそうなおじさんを探しつつぶらぶらしていると向こうからいかにも紳士といった雰囲気のおじさんがエレガントな歩き方でやってきた。妙に色気のある歩き方なので気になり、気になりついでにそのおじさんについていくことにする。

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●姿勢のいいおじさん
今日のおじさんです。
襟付きのシャツにジャケットにチノパンというおじさんの定番スタイルですが、シャツには赤と青の細いラインが入っていたり、ジャケットもジャストサイズだったりとこだわりが見られます。だるっとしたおじさん臭は決してしないながらも、きめすぎていないところがいい感じです。バックは一見吉田カバンのものかと思いましたが違いました。斜めがけというところもきめすぎない感じでよいです。身長は170センチあるかないかくらい。顔だちも上品。白髪の似合う二枚目です。ただ、整ってはいるけど特に特徴もないタイプでした。時代劇の「水戸黄門」にちらりとでてきて、江戸の町で笑顔で黄門様とすれ違ってそうです。

おじさんは腰をくねくね、腕を大きく降って背筋を伸ばして姿勢よく歩く。足を腰から前にだすようなモデルのような歩き方だ。東京ドームをぬけて水道橋駅の方へ。電車に乗ってしまうかもと、いつものようにひやひやしたが、そのまま通過。水道橋西通りをスタスタと軽快に進む。数十メートルおきに信号がありおじさんはもちろんとまるのだが、一度まっている時にジャケットのポケットから小さい紙切れを取り出し見ていた。何だろうと急いでかけよってみたが、字が小さくよく見えなかった。もうちょっと近寄ろうと思ったがすぐにしまってしまった。おそらく領収書か何かであった。
東京ドームからもう10分くらい歩いている。水道橋西通りは終わり専大通りに入った。

●「原稿を立てかけるもの」を求めて
一体どこまで歩くのだろうと思っていたら、左側に突如出現した赤い看板の「オフィス・デポ」にスイッと入った。曲がり方もエレガントだ。でもオフィス・デポとはちょっと意外であった。店内に入ったおじさんはめがねをかけた。めがねをかけるとますます紳士なこのおじさん。左手をズボンのポケットにいれ、ゆっくりと商品を見ている。ファイル、筆記用具と見ていくが、特に探し物はないようなかんじだった。が、思い出したようにレジに行き「えー原稿を立てるようなものはありませんか」と店員さんに聞く。わたしには「原稿を立てるようなもの」という存在がよくわからなかったのだが店員さんは解したようで「あー立てかけるやつでしたらあちらにあります」と案内した。おじさんは店員さんに教えてもらった商品をしばらく見ていたが納得がいかないのか手にとることはなく他のコーナーを見始めた。あっちへ行ったりこっちへ行ったりくまなく色々見ている。わたしも見つからないよう、見逃さないようおじさんを追い掛ける。おじさんはもう他にはないと判断したのか先程店員さんに教えてもらった商品を持ってレジへ。その商品とはカタログなどを立て掛けるたぶんディスプレイ用のもので、一体何に使うのか疑問が残る。

買い終えるとまたスイッと外へ。専大通りを水道橋のほうに少し戻り角を入る。古本屋がぽつぽつと見えて神保町が近いことを感じさせる通りだ。やっぱりこういう通りにはおじさんがしっくりくるなぁとうなずくわたし。こういう時、つくづく自分が女(しかも童顔)なことを損だと思う。

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●太極拳に関心が
おじさんはスイスイと歩き、いつのまにか趣きのある建物の中に入ってしまった。東方学会ビルと書いてある。「なんだここの職員か…尾行も終わってしまった…」とわたしをがっくりさせるような慣れた足取りだった。諦めつつのぞいてみるとガラス戸の向こうにはおじさんがまだいた。入口付近に貼ってあるものを見ている様子で、しばらくすると出てきた。よかった。そして今度は外にあるチラシを熱心に見てビリっとちぎって持っていった。急いで近寄って見ると、それは太極拳教室のチラシだった。他にも中国語講座など中国系の習い事関係のチラシがつるしてあった。わたしも太極拳にわりと興味があるので、こんな雰囲気のある建物でやるならよさそうだなと思う。なかなかいいところを教えてもらった。

細い道を進んで右に曲がり、おじさん今度は「神保町ひまわり館」というところに入る。千代田区神保町出張所・区民館と書いてある。ここはカルチャーセンターの宝庫のようで色々な催しのチラシが、御自由にどうぞと並べてある。おじさんは、なんかいいのないかなぁというふうにしばらくうろうろしていたが、ぴんとくるものはなかったのか手に取ることはなく終わってしまった。
by webmag-e | 2007-12-27 15:06 | 第5回 水道橋ー前編