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おじさんはいい。なぜだかおじさんを見るとイラストにしたくなる。
夜も働く交通整理のおじさん、ランニングとももひきででうろうろするおじさん、若い子にまじってソフトクリームを食べている仕事帰りのおじさん、へべれけに酔っぱらっちゃってるどうしようもないおじさん、いやー巨人だめだね、とおしぼりで汗を拭くおじさん。

おじさんは何をしても絵になる。いろんなものがにじみ出ている。
そんな魅力的なおじさん達をいつもはちらっと見てるだけだったけれど、じーーーっと見たらまた何かおもしろい魅力がでてくるかもしれない、そんなわけで気になったおじさんについていってみることにした。
知られざるふつうのおじさんの世界!
秋葉原にて ときには散歩のような尾行
いつものお散歩コースをゆくおじさん
 それにしてもこのおじさんは歩くのが遅い。とぼとぼといった感じだ。 座っていたときは60そこそこに見えたのに、歩くと急に70すぎのおじいさんに見える。がんばれと言いたくなる。 
 おじさんは応援されているとも知らず、マイペースにとぼとぼと、スピーカーやらステレオの部品やらが並んだ倉庫のような店に入り品物を眺める。どうも音楽好きのようだ。さらりと店内を一周し、また歩き始める。すると信号のない道路にでた。わりと交通量の多い道だが、周りの人は次々と渡っている。おじさんは渡ろうとする気配はあるものの、なかなか歩き出さない。まさかタクシー待ち?と思ったら急に走り出したのでびっくり。あっけにとられた私たちは渡るタイミングを逃す。車がきれるのを待って走っておじさんを追い掛ける。おじさんは「わたしはここにいるよー」という感じでやっぱり電気街をとぼとぼ歩いていた。
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 今度は「液晶ばんばん」というインパクトのある店名の店に入る。その名の通り、狭い店内に液晶モニターのみが超特価で揃っている。外で待っていると、まもなくおじさんは出てきたが逆戻りし、こちらに歩いてきた。気付かれたのかと思いあせるが、おじさんはお構いもなく私たちの目の前を通りすぎて、マニアックな中古音響機器店「真空管(有)アポロ電子」というお店に。路地にあるこのお店は小さい工場のようないちげんさんお断り的な雰囲気がした。おじさんはまたさらりと一周してでてきた。また歩き始め中央通りにでる。とぼとぼと、きょろきょろと、気はそぞろであるが迷いはないようだ。この頃から髪型が気になるのか、しきりに頭をなでつけながら歩く。そして携帯電話をまた取り出し、電話し始めた。オカルトなアナウンスが流れる雑多な変な店まで来ると、とまってメモをとっている。何か買うものを確認しているような感じだ。買い物を終えたおじさんは今度は投信スーパーセンターをのぞき見する。本当に色々な事に興味がある様子。すかさず店員に声をかけられる。何を言っているのかは聞こえなかったけど「あ、いや、ちょっと見てみただけです…」と苦笑いしているおじさんが想像できた。
 店員と話し終わり、やれやれといった感じで喫煙スペースに寄る。入り口付近のベンチに座り一服。路上喫煙が禁止となった今、タバコを吸うにはその場所にいかなければならないのを知る。どうやらおじさんの頭の中にはお気に入りのお店(音響機器店中心)と喫煙スペースのマップができあがっているようだった。そしてそれはいつものコースで、週1か月1かのペースでこの散歩を楽しんでいるのだろう。部品をちょこちょこ買い集め、自作のスピーカーなんかを作るのを趣味にしてるのかもしれない。老後の楽しみを満喫しているように見えた。

おじさんにつれられて
 一服したおじさんは交差点の所まで来ると、信号を待つあいだ道路沿いにある柿の木を見上げる。よくあるアジア系雑貨店の前を通れば、枝のような色の付いた細い棒をつまんでみたり、額縁屋の前を通れば店頭の世界の名画のレプリカを見てみたり、おじさんの興味は幅広いようだ。
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 気付けば住所は台東区上野に。中央通りから路地にはいる。おじさんは迷いなく、かくかくとまがりながら進んで行く。人気のない灰色の道路が続く。おじさんはそんな風景にぴったりなじんでいて、んーいいねぇ!とおもわずうなる。わたしは迂闊にもショッキングピンクの服を着ていた為、完全にその空気を乱していて申し訳ないとさえ思った。街とおじさんは重なって魅力的な風景になっている。みとれつつ、ついてくと、やがて右側に昔ながらの感じのいい銭湯がでてくる。へぇー!こんなところに銭湯あるんだ!また少し行くと「純喫茶 渚」というこれまた雰囲気のいい喫茶店を発見。ここいい!喫茶店好きのわたしとSさんは大興奮。尾行していることを忘れ、ここらへんいいですねぇとはしゃぐ。おじさんは淡々と歩き続け、大きな魚市場に入っていった。ここもいいぞ、と教えてもらったような気分になった。
 店内は生臭く、魚介類も人もぎっしり。店員さんも威勢がいい。食いしん坊のわたしはおじさんをおいながらもキョロキョロする。そして冷蔵ケースに入ったピンク色のまぐろのさくに気をとられる。「おいしそ〜」とうっとり。おじさんは何を買うんだろう?そう思っておじさんに目を戻したら、、、いない!2、3人前にいたはずなのに!まさかまた!?でもあのおじさんの速度ならそんなに遠くに行くはずはないとSさんと躍起になって探す。「わたしこっちいきます!」「じゃあわたしこっち!」さながら刑事ドラマのように必死になる。市場は2つのビルにまたがっていたので、途中外に出られるところもあり走ってそこも探したが結局見つけられなかった。Sさんに電話して確認するがあちらもいない、とのこと。市場をぬけると御徒町の駅だったので、そこから電車に乗ったのだろう。前回に引き続き結局また見失ってしまった。
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 見失ってしまったのは残念だったけど、尾行終了後はすごくいい後味が残った。こっそりおじさんの後をついていったのに、途中からつれていってもらっている感覚になった。言うならば「秋葉原〜御徒町間 おじさんと巡る しっぽりお散歩」だろうか。おじさんの面白さを再確認した尾行だった。今度はどんなおじさんに会えるか楽しみだ。完

by webmag-e | 2006-12-21 19:27 | 第2回 秋葉原ー後編