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おじさんはいい。なぜだかおじさんを見るとイラストにしたくなる。
夜も働く交通整理のおじさん、ランニングとももひきででうろうろするおじさん、若い子にまじってソフトクリームを食べている仕事帰りのおじさん、へべれけに酔っぱらっちゃってるどうしようもないおじさん、いやー巨人だめだね、とおしぼりで汗を拭くおじさん。

おじさんは何をしても絵になる。いろんなものがにじみ出ている。
そんな魅力的なおじさん達をいつもはちらっと見てるだけだったけれど、じーーーっと見たらまた何かおもしろい魅力がでてくるかもしれない、そんなわけで気になったおじさんについていってみることにした。
知られざるふつうのおじさんの世界!
シップとつぐないのおじさんー前編
10月某日 秋晴れ

今回は巣鴨にやってきた。巣鴨は「おばあちゃんの原宿」と言われるがその通り、平日の午前中、年輩の女性でにぎわっている。ぺちゃぺちゃと話をするおばちゃん達で賑やかだ。おじさんといえば、夫婦で来ている人がほとんどで、ひとりのおじさんは少ない。どうしよっかな〜とふらふらしながらとりあえず、とげぬき地蔵尊へ向かう。やっぱり巣鴨に来たらまずお参り。買い物もご飯もその後だ。そういう人が多いのではないだろうか。
お寺の前には、大福や唐辛子、漬け物などの出店が並んでいる。そういえば家の七味唐辛子がもうすぐなくなりそうなことを思い出し、買うことにした。入れ物が十数種類あるので物色していたら「くださ〜い!」と常連風のおばちゃんがやってきた。「どれくらい?」「二千円分。この前のなくなっちゃったから。普通のと辛いのと。ここのはおいしいのよ。」「そうだよ、うちのはおいしいよ。じゃ、辛い方には大辛って書いておくからね。これおまけ。」テンポのいい会話をしながら、手際良く七味の薬味を調合して袋につめる唐辛子屋のおばちゃん。わたしも便乗して一番小さいのを買う。中身入りで500円。紙袋にいれて、ゴムでくるくるっとやってくれるのもいい感じだ。やっぱり巣鴨は楽しい。

ここでわたしのようにふらふらとお寺に入りそうなおじさんを発見したので、このおじさんに決める。
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今日のおじさん。(イラスト)ベージュの帽子に上着、濃い灰色のズボンにごつめの靴。リュックを背負い、眼鏡をかけている。体型はどちらかというと細身で身長はふつう。年齢は70歳くらいか。

おじさんはまず入口でお線香を二束買い、帽子をとって門をくぐった。こういう気遣いは、どこでできるようになるんだろう、とふと思う。わたしも含め、同世代でできる人は少なそうだ。考え方の違いか、それとも年を重ねるといつの間にかできるようになるものなのか。
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おじさんは、さきほど買ったお線香を香炉にいれる。一束だけでもう一束はまだ持っているようだ。煙に手をかざして胸、頭をさすっている。そして、一歩離れ両手を合わせ祈る。スムーズである。続いて御本尊へ。お賽銭を入れて合掌。わたしも本日二度目の合掌。次に洗い観音へ向かう。自分の悪い部分と同じところをさすると、ご利益があるという洗い観音だが、大混雑。観音様の前には大勢がコンパクトに並べるようにくねくねとした道ができている。おじさんもさするのかと思ったがそれはしないで、そこの香炉にお線香を置き、手を合わせる。そしてとげぬき地蔵を出て、帽子をかぶった。

それまで迷いのない行動だったが、お寺をでたところで急に立ち止まった。ポケットをごそごそさぐっている。出てきたのはチラシのようで「お買得!」とかなんとか書いてある。そしてきょろきょろしたかと思うと向いのお茶屋さん(海苔も売っている)に入っていった。そのチラシを店のお姉さんに見せ、これ、と指をさしてる。どうやら特価のお茶と海苔を買う様子。常連さんなのか、「これ、いつものと違いますけどこれでいいですか?」と海苔を試食させてもらっていた。いい感じのお姉さんである。「うん、いいよこれで」とおじさん。一袋ずつ購入する。店頭ではお茶を販売していて、無料でお茶を配っていた。さっきまでおばちゃんにお湯の温度をレクチャーする店員がいたが、今はいなかった。台の上には紙コップに入ったお茶が並んでいて、おじさんはそれをひとつ取って、ゴクッと一気に飲み干した。

それからお茶と海苔の入ったビニル袋をぶらさげて、商店街を駅のほうへふらふらと歩き始めた。巣鴨の商店街は独特である。なかでも目をひくのは、衣料品店の赤下着。女性用パンツがあるのは前から知っていたが、今では男性用のパンツもブリーフをはじめトランクス、ボクサー型まであった。とにかく真っ赤か。他には和菓子屋、お茶屋など。なぜかにんにく屋も多い。どの店も店員はほとんど店頭に出て呼びかけをしているし、お客さんも多いのでとてもにぎわっている。本当に活気のある商店街だ。こういう場所があると、歳をとってからも楽しそうだな〜などと考えたりする。
おじさんに目をもどすと、和菓子屋の前まで来ておじさんはお店に近付いていった。ここもやはりおばちゃんでにぎわっていたが、おじさんは気後れすることもせず、女性陣の間に入っていく。ショーケースをちょっと見るも心は決まっていたようで、「塩大福」と店員に伝え、巣鴨名物で有名な塩大福5ヶ入り630円を購入した。ところでこのお店、巣鴨に数件ある塩大福屋さんで一番おいしいと、雑誌で読んだことがある。おじさんも色々食べた結果、ここのお店を選んだのだろうか。
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# by webmag-e | 2008-12-19 16:49 | 第6回 巣鴨ー前編